落語を聞くための決まった作法やルールはありませんが…
「落語に興味はあるけど、どんな噺(はなし)から聞いたらよいかわからない」
「落語初心者なのでおすすめの噺を知りたい」
こんな悩みをもっている方が、この記事を読んでいると思います。
聞きたい落語から触れてみるのが一番ですが、
それでも落語初心者はどんな噺から聞いたらよいか迷いますよね?
そこで、私の経験をもとに、初心者が落語を楽しむポイントや、おすすめの噺を紹介します。
是非、参考にしてみてください。
[プロフィール]
落語鑑賞歴18年
落語は時間があるときや長い移動中にDVDやCDで鑑賞
年に数回、寄席やホールなどのライブ鑑賞にも赴く
推しの落語家:桂枝雀師匠、柳家喬太郎師匠
目次
1.落語初心者が押えたい3つのポイント
- 有名な噺/知っている噺から聞いてみる
- 知っている落語家から聞いてみる
- 滑稽噺(こっけいばなし)から聞いてみる
以下で解説します。
■有名な噺/知っている噺から聞いてみる
「寿限無」、「饅頭こわい」、「死神」など…
まずは皆さんが知っている噺から聞いてみることをおすすめします。
「もうすでに内容を知っているから…」となりがちですが、同じ噺でも演者が違うとストーリーの細部が異なり違った面白さが味わえます。
例えば、「くすぐり」と言うクスッと笑える要素があります。一般的に言うギャグです。くすぐりは、演者のオリジナリティが入っているため、楽しむポイントの1つになります。
■知っている落語家から聞いてみる
皆さんが知っている落語家さんの噺から聞いてみるのはいかがでしょうか。
私の経験談ですが、以前から桂枝雀師匠が好きで、枝雀師匠のCDを片っ端から聞きました。同じ落語家さんの噺をいくつか聞いていると、自分の落語の好みが段々とわかってくるので、是非試してみてください。
■滑稽噺(こっけいばなし)から聞いてみる
落語の種類には、滑稽噺、人情噺、怪談噺、芝居噺などがあります。
滑稽噺とは簡単にいうと笑い話のことで、人の失敗談や間抜けな様子を題材にした噺になります。面白おかしく笑える噺の方が、初心者には落語の魅力が分かりやすいかもしれません。
※もちろん、他の種類も面白いのでタイミングがあれば是非試してください。
2.落語初心者におすすめの噺5選
時そば[うどん]
▼あらすじ
ある夜の屋台のそば屋とお客のやり取りから始まります。お客は割りばしや器、汁、麺にいたるまで、事細かに褒めたたえ、やたらと調子がいい。十六文のお代を払う際に、細かい銭しかないと言って「ひぃ、ふぅ、みぃ…」と払い始める。「…なな、やぁ」と数えたところで「いま、なんどきでぇ」と時間を尋ねる。そば屋は「ここのつで」といったところに、「とぉ、じゅういち…」と続けて、勘定を1文ごまかして去っていきます。
この様子を見ていた別の客が、翌日、同じ手口を真似てみるのですが、上手く行かず結局お代を多く払ってしまうという落ちの滑稽噺。
▼ポイント&補足
東京では「時そば」、関西(上方落語)では「時うどん」で、東西の文化の違いが落語にも出てくるところも面白いですね。「今、なんどきでぇ」は落語の名フレーズ??
青菜
▼あらすじ
植木屋が庭の手入れのあと、屋敷の縁側で旦那にご馳走になる。旦那に「菜を食べないか」と言われるが、菜を切らしていたため、奥様が「鞍馬から牛若丸が出でまして、名を九朗判官(くろうほうがん)」と隠語で知らせる。※隠語は[菜(名)は食ろう(九朗)てしまいました]
その様子が何とも上品に見えた植木屋は、家に帰って真似をしようと女房に言い出すのだが…。
▼ポイント&補足
この噺も先に起きた出来事を、後から真似て失敗する落語の典型的なパターン構成の滑稽噺。
夏の時期に演じる落語で、噺の中で鯉のあらいや青菜を、やなぎかげ(お酒)で、晩酌をしながら涼を楽しむ季節感のある噺です。この上品で優雅な情景と、対照的な植木屋の貧乏長屋で真似る暮らしの対比も面白さの1つだと思います。
最後、「あっ、なるほど」といった頓智?機転?が効いた落ちで、個人的に好きな噺です。
湯屋番
▼あらすじ
親に勘当され、出入りの棟梁の家で居候する若旦那。居候先の家の女房からはいつも冷たい視線を投げかけられている。そんな中、湯屋に奉公したらどうかと棟梁に薦められ、紹介状をもっていく若旦那。湯屋の主人が昼食を間だけという条件で、初日から番台に座った若旦那だが、期待に反して女湯は空っぽ。退屈した若旦那は、どこぞのお妾さんが湯屋に来る姿を頭に浮かべて妄想が始まる…そのお妾さんと次第に仲良くなり、家を訪ねて酒をご馳走になって…と次々と妄想を膨らませていく。身振り手振りが過ぎて、ついには番台から転げ落ちて…。
▼ポイント&補足
番台に座った若旦那が妄想を繰り広げて壊れていくスピーディーな流れが何とも面白く、落語家さんの見せ所でもあります。また、番台で妄想を繰り広げている若旦那を、風呂場から正気のお客が見ている温度差も面白い。スピーディーでテンポがよく、面白おかしく落語を楽しみたい方にはおすすめの噺です。
寝床
▼あらすじ
ある商家の主人は大の義太夫好き。趣味の義太夫を披露したくなった主人は、番頭に店の者と長屋の住人を招待するように命じる。しかし、主人の義太夫節はひどく下手で、誰も聞きたがらず、あれこれ理由を付けて断る始末。それを知った主人はすっかりへそを曲げ、「義太夫を聞かない奴は出て行ってもらう」と言い出す。困り果てた番頭は改めてみんなに訳を話し、みなが主人の義太夫を聞かせてほしいと懇願する。機嫌を直した主人は、みっちりと義太夫を語り始める…。
▼ポイント&補足
みなが義太夫を断る苦しい言い訳や、断る理由のない番頭が一人で義太夫を聞こうとする場面、主人の機嫌が戻るまでの悪戦苦闘も面白い。タイトル回収が、今のドラマっぽいところもおすすめポイントです。
金明竹
▼あらすじ
おじさんに道具屋の留守を任された与太郎。上方の加賀屋佐吉の使いがやって来て、言付けを頼まれる。関西弁の早口で言葉を理解できないので、おかみさんに助けを求めたものの、彼女もさっぱり。使いが帰った後、店に戻ってきたおじさんが使いの言付けを尋ねるが、二人の答えは全く要領を得ない。
▼ポイント&補足
関西弁で早口の使いの言付けを面白がって聞く与太郎と、客人に失礼があってはならないと必死に言付けを聞こうとするおかみさんの対比が面白い。また、早口で長い言付けを繰り返して話すところも、この噺を楽しむポイントかもしれません。
最後に、おじさんが「結局、使いは買わずにどうしたんだ」と尋ね、その回答が落ちとして回収される滑稽噺。
この噺のような間抜けな男は落語にはよく登場し、そんな噺を与太郎噺とも言います。
3.さらに落語を楽しむポイント
上記5選は落語のほんの一部ですが、気になる噺があったでしょうか。
少し落語に触れたところで、さらに落語を楽しむポイントをまとめてみました。
- 一度聞いて面白かった噺から派生する
- 噺に登場した文化に触れる
- 寄席やホール落語など、ライブを味わう
以下で解説します。
■一度聞いて面白かった噺から派生する
先述の「有名な噺/知っている噺から聞いてみる」でも触れましたが、改めて試してください。
①面白かった噺を演じた落語家で他の噺を聞いてみる
おそらくですが、あなたの笑いのツボに合う落語家だと思いますので、他の演目も是非トライしてみてください。落語家と落語の魅力にもっと触れることができると思います。
②同じ噺を他の落語家で聞いてみる
先述しましたが、同じ噺でも演者が違えば、くすぐりが違い楽しめるのも落語の魅力です。
落語初心者でも「○○師匠の××で、こんなくすぐりが好きで。。。」なんて言えると、落語に詳しいと思ってもらえるかも。
また、同じ噺でも落語家によって落ちが違うこともあります。その違いを知ることもさらに楽しむポイントになります。
■噺に登場した文化に触れてみる
落語に登場する浄瑠璃や歌舞伎、百人一首などの文化にも触れてみてください。落語の世界観をより理解でき、気付く点も多くなると思います。知れば知るほど、面白くなるのが落語の魅力でもあります。
落語「くしゃみ講釈」に出てくる「八百屋お七」という井原西鶴が作ったお話(「好色五人女」の1つ)の中に、駒込吉祥寺というお寺が出てきます。コロナ前に友人との散策ルート(巣鴨のとげぬき地蔵や六義園など)に駒込吉祥寺に紛れ込ませて行ったことがあります。マイナーなお寺ではありましたが、榎本武揚のお墓があるなど、知らなかったことに触れる機会ができたことがよかったと思います。
また、「幾代餅」とい噺がありますが、このお餅は今でも実際に売られているので、今度食べてみたいと思っていて、現在計画中です。
■寄席やホール落語など、ライブを味わう
CDやDVD、Youtubeでも落語を見聞きできますが、落語も音楽と一緒でライブで楽しんでこそ落語の魅力が伝わります。好きな落語家が出演する寄席や独演会、落語会などに行ってみては、いかがでしょうか。
私自身、年に数回寄席に行きます。自宅からは新宿が近いので末廣亭に行き、土曜日昼過ぎから16時頃まで鑑賞。そのあと、飲みに出かける…というのがルーティンになっています。
また、近所のお店が定期的に落語家さんを招いて地域寄席も行っており、こちらは気になった落語家さんが出演する時に鑑賞。前回の鑑賞は、真打昇進したばかりの蝶花楼桃花さんでした。
- 東京界隈の寄席会場の紹介 (外部サイトへ移動します)
- 料金について
木戸銭(きどせん)というチケット代が3000円程で、3時間程度滞在できます。
※場所や特別興行時は料金が若干異なります。
※寄席によっては一日中滞在できる寄席や、入れ替え制の寄席もあります。
- マナーについて
鑑賞時のマナーは感覚的に映画と一緒です。
特に和服を着る必要もなく、普段着で気軽に行きましょう。
寄席の外に出なければ、会場内の行き来は自由にできます。ただし、講演中の出入りは、周りの方が鑑賞しているので気を使いながら出入りしましょう。
映画と違う点は、面白いところは、遠慮なく声を出して笑ってください。きっと落語家さんもテンションが上がって、もっと面白い噺をしてくれるはずです。
4.まとめ
■落語初心者が押えたいポイントは3つ
- 有名な噺/知っている噺から聞く
- 知っている落語家から聞く
- 滑稽噺から聞く
・落語をより楽しむために、一度聞いて面白かった噺から派生してみる
「気になった落語家の他の噺」や「気に入った同じ噺を他の落語家で聞く」と、自分の好みがだいぶわかり楽しむコツがつかめる
・「噺に登場した文化に触れる」、「ライブ感のある寄席などにいく」ことも、さらに落語の魅力やさらに楽しめる機会になる
知れば知るほど魅力たくさんの落語ですが、落語に限らず誰もが最初は初心者です。
どんな落語から聞いたらよいか迷ったら、落語初心者おすすめの噺5選から聞いてください。
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